“楽しく走りたい!”そんな想いでつながるクルマ好きが、
信頼を寄せる理由は“笑顔”にあり。
コクピット川越
取材にご協力いただく本多光浩さんがコクピット川越に到着するとすぐ、魅力的にカスタマイズされたダイハツ・コペン、続いてトヨタMR2がやってくる。ほどなくして、パーキングスペースがいっぱいになると、店内では同好の士がテーブルを囲みクルマ談義が始まった。そして、その中心には印象的な笑顔……。
「安心して作業を任せられるし、アドバイスも的確。でもコクピット川越の魅力はそれだけではないんです。通い続けるようになった大きな理由は、皆川さんの人柄。親しみやすくて面倒見がいい。心のこもったサポートをしてくれます」
そう話す本多さんが、初めてコクピット川越を訪れたのは19歳の頃。以来26年あまりのつき合いになるというが、あの“笑顔”、そうコクピット川越 皆川善平代表のにこやかな表情を思い浮かべれば、本多さんの言葉にもなるほどと納得。わずかな時間お話をうかがっただけでも、そんな温かみが心に残っていたのである。
本格的なサーキット走行を楽しめるマシンの製作はお手のものと聞けば、どこか敷居の高さを感じてしまうが、お店の雰囲気は初めて訪れた方にもじつに心地よい。そして、カスタマイズを望んで訪れた方でも、タイヤ交換や日常点検のお客さまであっても、ハートフルな対応は変わらない。
クルマをコントロールする術は、雪道を走らせながら身につけた
コクピット川越と出会った頃、本多さんが手許においていたクルマは、AE86 トヨタ・カローラ・レビンGTVだった。ミドシップを含めた後輪駆動におもしろさを感じるという本多さんが、「程度のよいクルマがあれば、いまでもほしい1台」というハチロクは、腕を磨くためには格好のマシンだったようだ。
「当時はウインターシーズンになると、皆川さんやコクピット川越のお客さんと一緒に、長野方面の雪道へ走りに出かけました。たしかスタッドレスタイヤが登場したばかりの頃だったと思いますね。飛ばさなくても、雪道の運転はとても勉強になりました。クルマをコントロールする感覚は、そこで身につけたといってもいいかもしれません」
コクピット川越では、現在もサーキット走行会やジムカーナ練習会を定期的に開催しているが、それは走る場を提供し、クルマの楽しさを満喫してもらいたいという、皆川代表の願いによるものだ。ドライビングテクニックを磨くなかで、その楽しさのさらに奥にあるものにも触れてほしいのだろう。おそらく雪道を楽しむツーリングにも、同じ思いが込められていたに違いない。
その後本多さんはMR2、インテグラなどを乗り継ぎ、現在は1996年式MR2と2006年式ヴィッツRSを所有する。ヴィッツRSは家族も乗せる足グルマとして購入したが、いまでは街乗りからサーキット走行までを幅広くこなせるカスタマイズを施している。
“走る楽しさ”を共有できるから、きめ細かいサポートができる
本多さんのヴィッツRSは、エナペタル製車高調キットを装着している。皆川代表が最も信頼を寄せる製品で、コクピット川越の“顔”ともいえるデモカーのMR2やトヨタ86もエナペタルで理想のフットワークを追求している。
「走りに“質の高さ”を求める方にはエナペタルをおすすめしています。ベースがビルシュタインであることも大きな魅力ですが、ノーマル形状から車高調まで、走り方や好みに合わせて仕様変更できるから、希望通りのセッティングが行えるのです」と皆川さん。
“つるし”ではなく、オーダーメイドのオリジナルスペック。要望に耳を傾け仕様を決定する際に、皆川代表はじっくりと時間をかける。何を求めているのか? 何が理想なのか? ……走る楽しさを共有していなければ、そのニュアンスは伝わりにくいだろうが、一度使用したら次も、というお客さまは多いとのこと。エナペタルのハイクオリティだけでなく、コクピット川越のきめ細かい対応ゆえのことなのだろう。
ちなみに本多さんのヴィッツRSは、当初フロントにスイフト、リアにTRDレース用のスプリングを組み合わせ、サーキットをガンガン攻め込める仕様にしていたが、現在は街乗りにおける快適性にも配慮して以前より柔らかめの設定に変更。それでもさまざまな場面で楽しく走れるクルマに仕立てられているそうだ。
夢とこだわりがギュッと詰まったクルマに仕立てあげるお手伝い
これまで乗り継いだクルマはすべてマニュアルミッションだという本多さんは、コクピット川越が主催する走行会の常連組だが、サーキットを走る場合はMR2のステアリングを握ることが多い。
「ちょっと扱いづらい乗り味を持ったクルマを、うまく手懐けて速く走らせる。そんなところにMR2のおもしろさがありますね」と本多さんは話すが、以前ウェットコンディションのなか筑波サーキット2000で行われた走行会で、当日のベストラップをたたき出したこともあるという。皆川代表と二人三脚でセッティングを煮詰めてきただけに、クルマの完成度はかなりの域に達しているようだ。
一方、街乗りもこなすヴィッツRSは、快適性を大きく損なうことなく、楽しく走らせることができるクルマがコンセプト。オリジナルスペックのエナペタル車高調キットのほか、目立ったモディファイはタイヤ&ホイール、ブレーキパッド、そしてステアリング(脱着可能なラフィックスを装着!)程度だが、今回、シートをレカロRS-Gに交換。レッドラインが鮮やかなリミテッドモデルのスーパーシュタルクをチョイスし、取材の合間にコクピット川越の星野スタッフが作業を進めてゆく。ファクトリースペースではアライメント調整も行われるなど、星野さんは休む暇もないほどの忙しさだったが、その手際のよい仕事ぶりからは、技術力の確かさが感じられた。
新しい提案で、楽しく走るための環境づくりにも手を尽くす
コクピット川越のカスタマイズにおける実力を広く知らしめたのは、デモカーとして仕立て上げたSW20 MR2の活躍だった。REVスピード筑波スーパーバトルに山野哲也選手のドライブで参戦し、コンピューターチューンのみのエンジンながら1分3秒台をマークしたのである。
「本多さんもそうですし、いまでもSW20のお客さまは少なくありませんが、FD2、インテグラ、S2000などホンダ車にも強いお店です。デモカーを手がけてからは、トヨタ86にお乗りのお客さまも増えました」と皆川代表が説明するように、コクピット川越は走り系のクルマに幅広く対応している。
ただ、皆川代表は、もっと手軽に愛車の走りを楽しんでもらえたら、これほど嬉しいことはないと考えている。そんな気持ちから用意したのが、初代ヴィッツRSをベースとした一台。お約束のエナペタルで足まわりは引き締めているものの、あとはブレーキパッドの交換やフルバケットシートの装着くらいだ。
「ヴィッツには最低限必要なカスタマイズを施しました。大事なのは、足まわり、ブレーキ、そしてシート、この3つです。これだけで楽しめるクルマになるということを知ってもらいたくて製作しましたが、もうひとつのポイントはベースとなる車両。非力でコンパクトなクルマも、つくり方によってはおもしろくなりますよ」
新たな提案には、たくさんの人にクルマを楽しみ尽くしてほしいという皆川代表の思いがあふれているのである。