卓越した技術とノウハウ、そして想う気持ちは、
“こうしたい”をカタチにするためにある。
コクピット55
小さなボディなのに、放つオーラが一瞬近づくことをためらわせるほどだ。こうして取材をするときには、たいていクルマの情報を頭に入れて臨む。だから思い描いていたイメージから大きくずれることは希なのだけれど、目の前のホンダN-ONEはひと回りもふた回りも大きく感じられ、不思議な存在感を漂わせていたのである。
こだわり抜いてチョイスしたパーツを盛り込んでいることは承知しているが、周囲をぐるりと回っても派手な印象はない。どこか愛らしい顔つきもそのままなのだが、このプレミアムホワイトパールのボディは、たくさんのクルマの流れの中にあってもすぐに見つけだせる気がする。
なぜだろうと腑に落ちない心持ちを抱えながら、N-ONEをここまで仕上げたオーナーの服部高久さんと、そのカスタマイズの実現をサポートしたコクピット55の朝子 誠店長に声をかけた。実は服部さん、入社15年となる朝子さんより“コクピット歴”が長く、1994年からお店に通っている。当時はタービン交換やボアアップまで手を染めたR31スカイラインが愛車で、通勤途中にあったコクピット55をふらりと訪れてからの長い付き合いだという。現在、通勤の足として毎日のようにステアリングを握るN-ONEは2014年に購入したが、手に入れるとすぐに自分好みへのモディファイがスタートした。
すべては“このホイールを履かせてみたい”から始まった。
このN-ONE、なんと言っても足もとに視線が留まるだろう。軽自動車用のホイールとして絶大な人気を誇るレイズ ボルクレーシング TE37 KCRを組み合わせているが、聞けばすべてはこの鍛造1ピースホイールありきで、カスタマイズのイメージを膨らませていったのだそうだ。3年ほど前に、日常のパートナーとして使用するクルマを買い換えるにあたって候補に挙がったのが、実用性に優れていて、なおかつキビキビ走ることができそうなN-ONE。そして惚れ込んだTE37を装着したところを想像してみて、「これならイメージ通りに仕上がる!」と考えたのだという。
こうしてクルマが納車される前から朝子店長に相談し、N-ONE進化計画の青写真はふたりの間で共有される。そして、前後同サイズながらフロントにFACE2、リアにFACE3とリムやスポークの仕様が微妙に異なるTE37をチョイスするなど、徹底したこだわりをもってまずは足回りを中心とした作業を進めたが、このあともいくつかのステップを積み上げながら服部さんの理想の姿に近づけていくことになる。
なかでもTE37の“見せ方”とともに譲れなかったのが、気持ちのいい乗り味と快適性の両立。たどり着いたのはオーリンズのオーソリティとして知られるウプランズで特注ダンパーを製作することで、メンバーブレースやリジカラによるシャシーへの手当なども相まって満足のいく出来映えとなった。
バランスのとれたカスタマイズを支えるPOTENZA
このクルマのもうひとつの“見せ場”は、フロントホイールの奥に覗くエンドレス6POTキャリパーキットだろう。どんな場面でも確実なストッピングパワーを手に入れたいという服部さんの希望から装着したものだが、機能をしっかり押さえた上でセンスよくドレスアップ効果を漂わせたところが心憎い。
そんなカスタマイズの絶妙のさじ加減は、フロントにBLITZ、リアにテイクオフ製という組み合わせのエアロパーツからも伝わってくる。その佇まいに軽自動車らしからぬどっしりとした印象を感じるのは、このチョイスがあればこそといえる。
一方、TE37に組み合わせたタイヤはPOTENZA RE050である。服部さんは、ハンドリングと乗り心地を高いレベルでバランスさせた上質なフィーリングがお気に入りとのことだが、コクピット55では軽自動車にもPOTENZAを装着することが多いと朝子店長は言う。その先駆けとなったのがこのN-ONEで、乗り味を追求し試行錯誤を重ねた結果、RE050にたどりついた。
朝子店長は、「もちろん、お客さまのご要望やクルマの使用環境に合わせたタイヤ選びが基本です」と前置きしつつ、「山道を走る機会が多い高知では、背の高い軽自動車にタイヤの両サイドが早く減る両肩摩耗が多く見られます。そういった場合、優れた剛性を実現したPOTENZAシリーズをおすすめしています」と説明してくれた。そして安心感を持って運転していただき、タイヤを長く使ってもらうためにも、定期的なアライメント調整が欠かせないメンテナンスメニューとなっている。
オーナーの理想を実現したコクピット55の懐の深さ
こうしてオーナーの服部さんとコクピット55の朝子店長に話を聞いているうちに、少しずつ最初に感じた違和感が薄れてきた。つまり、装着するひとつひとつのパーツが吟味され、装着するにあたっては性能を最大限に発揮させるべく高いクオリティで作業を行い、仕上がりに徹底的にこだわることで、想像をはるかに超えたN-ONEができあがったのだ。そこには、オーナー自身のクルマに対する熱い思いや卓越したセンスがにじみ出ている。同時に、その理想を実現するコクピット55の技術力と経験値、そしてお客さまの想いに応えようとする真摯な姿勢もギュッと詰まっている。
「クルマに関しては妥協したくないのですが、コクピット55には“こうしたい”を必ず実現してくれる懐の深さを感じますね。だから長いお付き合いになったのだと思います」と話す服部さん。N-ONEのカスタマイズがひと段落し、その走りを日々満喫しているけれど、実はそろそろ“次の一手”も頭の中にあるようだ。さてどうしようかと朝子店長と作戦会議を重ねているのがRECAROシートへの交換。さりげなく自分好みに仕立てるのが服部さん流ゆえ、いかにもスポーティに装うのは抵抗がある。しかし“より快適に、より楽しく”を追求すればRECARO装着のメリットは大きい……。服部さんの複雑な胸中を察しつつも朝子店長のおすすめプランはできあがっている様子だが、そんなあうんの呼吸を通して、このN-ONEは生まれたのである。