親から子へと受け継がれる、美しく保たれたレアモデル
コクピットF-1
ちょうど約束の時間を迎える頃、シルバーのボディを輝かせてR33スカイラインがコクピットF-1の駐車場に滑り込んできた。助手席から降りてきたのは、新車時から大切に乗り続けてきたオーナーの松本孝一郎さん、そしてステアリングを握っていたのが次男の守弘さんだ。それからほどなくして、長男の有弘さんが購入したばかりのシビック・タイプRでやってきた。
無論、親子三人とも大のクルマ好き。そして熊本市内で営業するコクピットF-1に、愛車の整備からカスタマイズまでを任せている。担当するのは田尻明男店長で、この日も3人が到着するなり楽しそうなクルマ談義が始まった。
お父様の孝一郎さんがスカイラインの整備で初めて来店されたのは、さかのぼること16年前、田尻店長がコクピットF-1に入社した頃のことだ。それからの長いお付き合いとなっているが、スポーツカーを乗り継いできた有弘さん、守弘さん兄弟もコクピットF-1を何度となく訪れている。
さて、めざとい方はもうお気づきかもしれないが、このR33スカイラインはBCNR33、つまりGT-Rだ。しかも、オーテックバージョンの4ドア“BCNR33改”なのである。その詳細は、ぜひ“COCKPIT Selection”の紹介記事でご確認いただきたいが、孝一郎さんがいかにこのクルマを大切にしてきたかがひと目でわかるほど、素晴らしいコンディションに保たれていた。
試行錯誤を繰り返しながらハイレベルな要望に応える
田尻店長がこのスカイラインGT-Rオーテックバージョンと初対面したとき、すでにカスタマイズは進行中だった。しかし、オーナーの孝一郎さんにとってはまだ満足のいく状態ではなく、“もっとしなやかな乗り味の足まわりにできないか”という要望を投げかけられたのだそうだ。
そこで田尻店長が試乗すると、サスペションはきちんと仕事をしているように思える。これ以上の仕上がりにするには、さてどうすればいいかとしばし頭を悩ませたが、一方で大きなやりがいも感じたという。
そして何度もセッティングを繰り返し、試行錯誤を重ねて及第点をもらったが、その後も孝一郎さんのオーダーは常に高いレベルを求めるものばかり。しかし、そんなクルマを通してのキャッチボールを積み重ねるなかで、田尻店長は孝一郎さんの好みやこだわりを深く理解していく。田尻店長から整備やカスタマイズの提案を行うことも多くなり、いまではあうんの呼吸で注文に応えられるようになった。
だから、田尻店長に対する孝一郎さんの信頼は厚い。整備もカスタマイズも安心して任せられると、孝一郎さんは笑顔で話してくれた。
ちなみに、以前はかなりのハードチューンがR33GT-Rに施されていたが、2年ほど前にクルマ全般にわたるリフレッシュ作業を実施。現在はオリジナルスペックをベースにしながら、ボディ剛性アップなども含めたファインチューンが光るクルマとなっている。
繊細な感性で、GT-Rの乗り味をさらに磨きあげた
「子どもの頃から我が家にあったクルマですから、僕ら兄弟にとっても深い愛着があります。リアシートに乗せてもらい、コクピットF-1にもよく遊びに行きましたよ」そう話すのは、次男の守弘さん(写真右から2人目)。守弘さんと兄の有弘さんは、自動車教習所に通っていた頃、自作の“仮免許練習中”のプレートを付け、33GT-Rで路上に出たこともあるそうだ。
オーテックバージョンの特別なGT-Rは、あたりまえのようにいつもそばにいる家族のような存在だったのだろうが、守弘さんはそのGT-Rをお父さまから譲り受けることになった。「父が大切にしていたことはよく知っていますから、コンディションを崩さずに長く乗り続けていきたいと思っています。だからこれからも田尻店長には、いろいろとお世話になるでしょうね」と守弘さん。
宝物のような愛車を息子さんに託す孝一郎さんは、「実はこれほど長く乗り続けることになるとは思いもよりませんでした。コクピットF-1に出会って、自分好みのクルマに仕上げることができたのが、やはり大きかったのでしょうね」と振り返る。
一方、田尻店長は、「最近は大まかな要望をお伺いし、細かいセッティングはお任せいただくときもあります。そんなとき、例えば車高を1〜2mm落として少し味付けを変更したとしますよね。そうすると、『オッ、車高変えたね』って、すぐに気づかれるんです。自分自身で感じたことをとても大切しながら、ぶれない尺度を身につけていらっしゃる方ですね」と、孝一郎さんをリスペクトしている。
タイヤの重要性が身に浸みているからPOTENZAを選ぶ
親子三人でコクピットF-1を訪れたのは、長男の有弘さんの新しいパートナーであるシビック・タイプRのカスタマイズの相談もあってのことだった。チャンピオンシップホワイトのボディカラーをまとうFK2 タイプRは、国内限定750台のレアモデル。そのままでも十分にスペシャルだが、まずはブレーキチューン、そしてPOTENZA RE-71Rを履かせようかと考えている。
実は松本さん親子は大のPOTENZAファン。なかでも孝一郎さんは、「クルマのパフォーマンスを左右する重要な要素のひとつがタイヤ。まずは高性能かつハイクオリティなタイヤをチョイスして“おおもと”をしっかりさせなければならない」という信念を持っている。そして、これに応えてくれるいわば基準となるタイヤがPOTENZAだったというわけだ。
現在、33GT-RにはインチアップしたNISMO LM GT4 OMORI FACTORY SPECにPOTENZA RE-11Aを組み合わせているが、それ以前にはS001を装着していたときもあった。33GT-Rを受け継ぐ守弘さんは、今後サーキット走行にもトライする予定で、そのときには優れたグリップ力に定評のあるRE-71Rへ履き替えたいと思っている。
さて、シビック・タイプRのタイヤチョイスについても、親子で話が盛り上がっていく。さらに田尻店長も交えて、サイズはどうするのか? そしてホイールは? と、漠然としていた有弘さんのイメージがどんどん具体化されていった。クルマ好きにとっては、こんなひとときがなんとも心躍るものなのである。
紋切り型ではない、個々の要望に合わせた提案の大切さ
タイヤの選択に強いこだわりを持つ孝一郎さんだが、これについてはもうひとつ、細心の注意を払っていることがある。それは空気圧だ。ただ単に指定空気圧に合わせるのではなく、そこから自身の好みに合わせて、またクルマの仕様も考慮しながら微調整を重ね、乗り味を調えているのだ。
そんな孝一郎さんの考え方に触れて、田尻店長も空気圧の重要性を再認識したという。わずかな空気圧の違いでドライブフィールが変化する……。愛車のカスタマイズを楽しまれている方や、サーキット走行をされる場合は気を配る部分だろうが、田尻店長はすべてのドライバーにもっとタイヤの空気圧に関心を持ってほしいと考えている。
コクピットF-1は国土交通省指定の民間車検場で、的確かつスピーディに対応できるよう、車検専任のスタッフが業務にあたっている。そうして年間に3000台もの車検整備を行っているのだが、セルフスタンドが急増した近年はとくに空気圧不足が目に付くようになった。だから来店されたお客さまには、ことあるごとに定期的な空気圧点検をおすすめしているという。
「タイヤ販売はもちろん、アライメント調整などを通してもクルマをいいコンディションで乗り続けていただけるように務めています。空気圧点検もそのひとつですが、さらにお話をじっくりお聞きすることで、それぞれのお客さまにあわせた“オリジナルのご提案”が行えるように心がけています。もちろん、カスタマイズについてもその姿勢は変わりません」。お客さまを理解すること、それが大切なのだと田尻店長は心に刻んでいるのである。