BMW M3 コクピットエイジ

絶妙のカスタマイズで“総合力”を引き上げた特別なBMW M3
VARIS(VRS)のカーボンボディパーツをボディにちりばめ、リアにはIDINGPOWERのリアウイング。そして足もとにはVOLK RACING TE37。エクステリアはなんともアグレッシブで、目の前にすると強烈な迫力にたじろいでしまいそうだ。なのに、このM3には気品がある。素のE92 M3が湛えた力強さと美しさのバランスを崩すことなく仕上げられているから、違和感がない。
聞けば当初のカスタマイズ・コンセプトは「ホテルのエントランスからサーキットまで」、というオールラウンダーだったそうだ。現在でもストリートユースの使い勝手は譲れない部分だけれど、サーキットでのタイムアタックに照準を定めた“方向性”の見直しが進められた。
例えば、BMWのスペシャリストとして知られるアシスト京都がプロデュースしたクァンタム車高調や、ピロアッパーマウント/ピロボールマウントを採用し、さらにはリアアクスルキャリアのリジッドマウント化も図られた。ソリッドな走りを追求し、サーキット走行でより「踏める」仕様になったが、十分に実用のアシとして使える快適性も確保している。
オーナーがM3を購入してからもうすぐ5年。ひとつひとつこだわりのカスタマイズを盛り込み、仕様変更を重ねてきたわけだが、それでもこのクルマには筋がビシッと通ったまとまり感がある。それは、オーナーとカスタマイズを手がけたコクピットエイジが、熱い心を持ち続けて、このクルマと接し続けてきたからなのかもしれない。


DETAILS
匠の技
FOOTWORK - FRONT

サーキット走行を見据えて
まだまだ進化し続けるM3
その可能性をさらに追い求めた特別なM3の足回りには、サーキット走行におけるパフォーマンスアップを狙ってクァンタム車高調、ブレンボキャリパーなどハイスペックアイテムを投入。オーナーの走行性能に対するこだわりが最も感じられる部分なのである。

①アシスト京都 オリジナルセッティングのクァンタムT3-CRを装着。スプリングはハイパコをチョイス。②アシスト京都 ピロアッパーマウントの取り付けにより、キャスター/キャンバーの調整は無段階で可能だ。③arcパイプ・スタビライザーはその名の通り中空タイプなので、ロール剛性を向上させながら軽量化にも貢献。④走行時の振動を軽減し、ハンドリングや走行安定性も向上させるCOXボディダンパーをフロントフロア部に取り付け。⑤ブレーキシステムは、ブレンボGT-KITに、カーボンの含有率を上げ強度をアップしたディクセルFCRローターを組み合わせた。フロントキャリパーは6POT。
FOOTWORK - REAR

フロントと同様に
高性能パーツを積極投入
装着パーツは基本的にフロント同様のアイテムとなる。E92 M3クーペのサスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク。ノーマルでもそのパフォーマンスには定評があるが、サーキットを本気で攻め込むならばモディファイは欠かせない。

①クァンタムのハイエンドモデルT3-CR車高調は、前後ともリザーバータンク仕様。スプリングもフロント同様にハイパコの組み合わせ。スプリングレートはフロントが16K、リアが22K。②ブレンボGT-KITのリアキャリパーは4POTで、ドリルドベンチレーテッドディスクをそのまま使う。
LINKAGE

よりシャープ&ソリッドな
乗り味を実現するリジッド化
クァンタム車高調の装着とともに、サーキットを攻め込めるM3にするために行ったのが、各部のリジッド化。乗り心地に配慮してゴムブッシュを用いて組み上げられている部分のムダな動きを抑えることにより、ソリッドで安定した走りを実現しタイムアップを狙った。

①フロント・テンションロッドをアシスト京都オリジナル・ピロボールマウントに交換し、よりシャープなハンドリングを実現。②リアアクスルキャリアにアシスト京都オリジナルのフルリジッドマウントセットを取り付け(上の写真も同様)。併せて4箇所のマウントを交換することで、直進性の向上とコーナリング時の安定性がアップ。オーナーもコーナリングスピードが上がったと、その効果を実感している。
TIRE & WHEEL

まずはスポーツラジアルで
どこまで追い込めるか?
ストリート仕様のタイヤ&ホイールは、19インチのブリヂストン・ポテンザRE-11にレイズ・ボルクレーシングTE37TTの組み合わせ。足回りのリジッド化を図ったこともあり、今後サーキットではさらなるタイムアップを狙ってSタイヤの投入も視野に入れている。

①がフロント、そして②がリア。レイズ・ボルクレーシングTE37TTのサイズは、F:19×9.0J、R:19×10.5J。リム部をボディ同色に塗り分けたスペシャル仕様だ。このほかに18インチのポテンザRE-11Aとレイズ・ボルクレーシングTE37SL LTDのサーキット走行セットも用意する。
INTAKE & EXHAUST

パワフルでスムーズな
V8をさらに気持ちよく
4L V8ユニットにメカニカルチューンは施していないが、オカダプロジェクツ・プラズマダイレクトとグループMラムエアシステムを取り付けた。クルマを手に入れると足回りはもちろんのこと、点火系と吸排気にはかならず手を入れるというのがオーナーのこだわり。

①②エンジンに送り込むフレッシュエアの熱の影響を抑え、吸入効率を高めたグループMラムエアシステムを取り付け。車種別に設計・開発された高機能アイテムだが、軽量化に貢献するカーボンダクトの仕上げが素晴らしく、エンジンルームのドレスアップとしても効果的だ。③④ハイクオリティ・エキゾーストメーカーとして人気急上昇のアクラポヴィッチ・エボリューションシステムを装着。排気効率アップはもちろん、乾いたエキゾーストノートが心地いい。
EXTERIOR

アグレッシブでありながら
統一感のある仕上がり
クリア塗装のカーボンパーツをエクステリアの要所要所に配し、迫力のある外観にまとめられたM3クーペ。もちろん、それらはドレスアップが主目的ではなく、軽量化やクーリング、そして空力特性の向上を目指した機能パーツだ。だからこそ凄味を感じるのである。

カーボンパーツはVRSを中心にチョイス。①②カーボン製クーリングボンネットは、高剛性を確保しつつ卓越した軽量化を達成。ダクトを設け、エンジンルーム内の熱を逃がす。③フロントエンブレムはガルビノ・カーボンルックに交換し、カーボンボンネットとのマッチングを図った。④VRSフロントスポイラーとエクステンションリップを組み合わせて装着。さらにカーボンカナードの配することで、クルマの表情が大きく変わった。⑤リアフェンダー前にはガルビノ・カーボンスパッツを取り付け。⑥ボリューム感のあるリアウイングはIDINGPOWER製で、純正トランクスポイラーもそのまま残してある。⑦リアデフ回りからボディ後端までをカバーするVRSカーボンディフューザー。フロア下の空気をスムーズに流し、ダウンフォース効果を高める。⑧“ランボスタイルドア”は遊び心を感じさせる部分。なんともカッコイイ。
INTERIOR

楽しく速く走るために
機能が最優先のコクピット
身体をがっしり支えるバケットシート、ステアリングやペダル類など操作系、そしてクルマのコンディションを的確に伝える計器類など、“走り”に集中するために必要なアイテムを盛り込んだコクピット。そのパーツチョイスにもオーナーのこだわりがあふれている。

①シートは左右席ともにレカロRS-Gアルカンターラ。ドライバーズシートにはシュロスprofy asmⅡハーネスを組み合わせる。②シボ仕上げのブラックレザーをスポークに使用しグリップ感を高めたライドSUPER SPORT CONCEPTステアリングに交換。③ダッシュボード左端には、Defi Link Meter ADVANCEタコメーターを中心に、ULTRAシフトインジケーター、HKSサーキットアタックカウンター、TPチェッカーモニターをレイアウト。また、センターコンソールには3D Designの油圧・水温・電圧計をセットした。④トランクルーム内にarcパワーブレースを装着することで剛性アップ。

OWNER'S VOICE
中島辰浩さん
E92 M3のオーナー 中島さんは、とにかく走ることが大好き。北海道の余市にお住まいということもあって、M3のほかにウインターシーズンを“楽しむため”のGC8 インプレッサWRXがガレージに収まる。大切なM3のドライビングを満喫するのは、主に雪のない期間だ。「RX-7に乗る息子に誘われて十勝サーキットを走る機会が増えたのですが、そうするとタイムが気になって……。ストリートで楽しめるM3であることにこだわり続けているけれど、いまは少し尖った方向に振れています。つぎのモディファイはGTウイング、そしてSタイヤかな」と中島さん。コクピットエイジとともに歩む愛車の進化の道筋には、まだまだ先があるようだ。
SPEC
ベース車両 | BMW M3 COUPE(2010年式) |
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タイヤ | STREET/BRIDGESTONE:POTENZA RE-11 CIRCUIT/BRIDGESTONE:POTENZA RE-11A |
ホイール | STREET/RAYS:RAYS VOLK RACING TE37TT F:19×9.0J、R:19×10.5J CIRCUIT/RAYS:RAYS VOLK RACING TE37SL LTD F:18×9.0J、R:18×10.5J |
フットワーク | QUANTUM: T3-CR(ASIST京都 オリジナルセッティング) HYPERCO: 16K/22K ASIST京都:ピロアッパー(F&R) ASIST京都:アーム類 ピロボール ASIST京都:リアアクスル フルリジッド CPM: REINFORCEMENT COX: ボディダンパー arc: パイプ・スタビライザー |
ブレーキ | brembo: GT-KIT(F:6POT φ380、R:POT φ380) DIXCEL: FCRローター IDI: プレミアムサーキット・ブレーキパッド |
ボディ補強 | arc : パワーブレース |
エンジン・駆動系 | オカダプロジェクツ: プラズマダイレクト DREXLER: LSD |
吸排気系 | AKRAPOVIC: エボリューションシステム Gruppe M: RAM AIR SYSTEM EC |
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インテリア | 3D Design: 油圧・水温・電圧計 Defi: Link Meter ADVANCE タコメーター HKS: サーキットアタックカウンター ULTRA シフトインジケーター RECARO: RS-Gアルカンターラ シュロス: profy asmⅡ RAID SUPER SPORT CONCEPTステアリング 3D Design: ペダル、フットレスト 3D Design: サイドブレーキレバー |
エクステリア | VRS: フロントエクステンションリップ VRS: カーボンデュフューザー VRS: カーボン製クーリングボンネット VRS: カーボンカナード VRS: フロントスポイラー GARBINO: カーボンエンブレム GARBINO: カーボンスパッツ IDINGPOWER: リアウイング BELLOF: シリウスLEDリング BELLOF: GT7000バルブ BELLOF: パワーユニット SPECルマンGT |
油脂類 | pakelo: クリプトンレーシング 10W60 PENTSIN: FFLレーシング DCTフルード |
その他 | Orange Japan TPチェッカー スポーツモデル LSD(ランボスタイルドア) |